パルスオキシメーターとは
- 1.パルスオキシメーターって何?
肺から取り込まれた酸素は、血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンと結合して動脈血として全身に運ばれます。
パルスオキシメーターは赤色・赤外の2種類の光を利用して、血液中のヘモグロビンうち酸素と結びついているヘモグロビンの割合をパーセント(%)で表示します。
これを血中酸素飽和度あるいは記号でSpO2と言います。
また、パルスオキシメーターはSpO2だけでなく、脈拍数も同時に測定表示します。
- 2.血中酸素飽和度で何がわかるの?
大気に含まれた酸素は呼吸によって肺に吸い込まれます。
肺は約3億の小さな肺胞からできており、肺胞は毛細血管に取り囲まれています。
肺胞壁や毛細血管壁は大変薄い構造のために、肺胞に入った酸素は瞬時に肺胞から毛細血管内へと移行します(成人では安静時に0.25秒)。
血管内に拡散した酸素の多くは赤血球内のヘモグロビンと結合し、一部は血漿に溶解します。
酸素を多く含んだ血液(動脈血)は肺静脈から心臓の左房・左室を経て、全身の各臓器に運ばれ、各臓器の細胞に供給されます。
輸送される酸素量は、主にヘモグロビンと酸素の結合の程度(肺の因子)・ヘモグロビン濃度(貧血の因子)・心拍出量(心臓の因子)の3つで決定されます。
酸素飽和度は体に輸送される酸素量の指標の一つで、特に肺に関係して体に充分な酸素を供給できているかの指標となります。
また一方で脈拍も測定できますが、心拍出量は1回あたりに拍出する回数(=脈拍)ですので、心臓因子の一部指標もパルスオキシメーターで掴めることになります。
- 3.酸素は体をどのように流れるの?
我々が生命を維持するためには酸素が必要です。空気中の酸素は吸収によって肺に取り込まれ、肺の毛細血管を経由し前進に運ばれます。
●酸素が肺内に入り、炭酸ガス(二酸化炭素)が肺から大気中へ排出される過程を換気と呼びます。
●吸入された空気は上気道から末梢気道を通り肺へと分配されていきますが、これを分布と呼びます。肺は肺胞と呼ばれる組織が集まって形成されていますが、肺胞内から肺胞膜を介して肺毛細血管へ酸素が入り、また逆に炭酸ガスが肺毛細血管内から肺胞内に出て行く過程を拡散と呼びます。
- 4.酸素が血液中を運ばれる仕組みを教えて?
血液の大きな役割のひとつが、酸素を肺から受け取って組織へと運び、組織からは二酸化炭素を受け取ってこれを肺に運ぶことです。
気体の液体中(血液中)に溶ける量はその気体の圧力(分圧)に比例します。
また気体の溶けやすさは気体ごとに違います。
酸素は1mmHgにつき血液100mlで0.3ml溶けますが、これは二酸化炭素の溶けやすさの1/20にしか過ぎません。
酸素が血液に溶ける能力だけでは充分な酸素を運搬することができません。
そこで酸素の運搬役としてヘモグロビン(Hb)が登場します。
ヘモブロビンは1分子当たり4つの酸素分子を結合する能力があります。
ヘモグロビン1gにはさんそ1.39mlが結合できます。
血液100mlには約15gのヘモグロビンが存在していますので、血液100mlで20.4mlの酸素がヘモグロビンに含まれることになります。
100ml中の血液の酸素含有量(20.7ml)=溶存酸素(0.3ml)+Hb結合酸素(20.4ml)
- 5.酸素飽和度って何?
酸素と結合したヘモグロビンを酸化ヘモグロビン(HbO2)、酸素と結合していないヘモグロビンを還元ヘモグロビン(Hb)と呼びます。
酸素飽和度とは血液中のヘモグロビンのうちどれだけが酸素と結びついているかを示すもので、下記のような数式で定義されています。
C(HbO2)
酸素飽和度 = --------------------------------- × 100(%)
C(HbO2)+C(Hb)C(Hb)=還元ヘモグロビンの濃度 C(HbO2)=酸化ヘモグロビンの濃度
ヘモグロビンには酸素が4個までつきますので、酸化ヘモグロビンといっても酸素が1個、2個、3個、4個の組み合わせがありそうです。しかし、ヘモグロビンにとっては、酸素がついていないか、あるいは酸素が4個ともついている状態が安定しており1個、2個、3個しかついていない組み合わせは非常に不安定なのです。
そのため実際には、酸素が1つもついていない還元ヘモグロビン(Hb)の状態か、酸素が4個ともついている状態での酸化ヘモグロビンとなります。
酸素飽和度はSaO2とSpO2があります。
SaO2は動脈血を採血して測った酸素飽和度、SpO2はパルスオキシメータで測った酸素飽和度で、それぞれ動脈血酸素飽和度、経皮的酸素飽和度ともいいます。
- 6.PaO2とSpO2の関係はいつも同じなの?
血液中に溶ける酸素の量が酸素分圧に比例しますが、ヘモグロビンに結合する酸素の量も酸素分圧が高くなれば増えていきます。
酸素分圧をPO2と表記しますが、動脈血の酸素分圧を特にPaO2と表記します。
しかしヘモグロビンに結合する酸素の量は溶存酸素と異なり比例関係ではなく図にするとS字上の曲線を描きます。
この図を酸素解離曲線と言います。
酸素解離曲線は「標準酸素解離曲線」と呼ばれるもので、体温37℃、pH7.4の条件のものです。
条件が変わると右にずれたり左にずれたりします。
体温が下がる、pHが上がると左にずれ、体温が上がる、pHが下がると右にずれます。
下図のpH低下の場合の曲線ですとPaO2 80mmHg(Torr)で酸素飽和度80%となります。
これでは充分に酸素が運搬できないと思われますが、毛細血管部分40mmHg(Torr)では酸素飽和度は30%に下がります。
すなわち組織には80%-30%=50%の酸素が放出されます。
標準時では逆に98%-75%=23%でしたので標準よりもずっと多くの酸素が供給されることになります。
※本邦における呼吸不全の定義(基準)はPaO2 60%Torr以下であり、PaO2 60%TorrはSpO290%に相当します。
-----【mmHgとTorrについて】----------------------------------------------
1気圧は760mmHgですが、これは1気圧の時にできる水銀柱の高さが約760mmだからで、この「Hg」は水銀のことです。
一方、世界ではじめて水銀を利用して大気圧を測定したのがガリレオの弟子トリチェリ(Torrichelli)で、彼にちなんで圧の単位をTorrで表すようになってきました。
mmHgとTorrは基本的に同じで、大気圧は760mmHg=760Torrです。SpO2は最近ではTorrが使われています。
- 7.パルスオキシメーターは何のために使われるの?
元々パルスオキシメーターは手術時・麻酔時、のバイタルサインモニターとしての利用から始まりましたが、パルスオキシメーターは患者負担がなく、瞬時にリアルタイムの測定ができることから利用用途は大きく広がり、スクリーニング、診断、経過観察、自己管理などの様々な目的で利用されています。
以下にそれらの利用例を紹介します。
①疾病の重症度の判定
SpO2値単独ではなく、他の臨床症状と合わせて判定します。
たとえば、日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン2000」では、以下の記載があります。例1:肺炎の重症度判定
軽症:PaO2>70Torr
重症:PaO2≦60Torr、SpO2≦90%
②血液ガス測定のスクリーニング
病態把握のために血液ガス測定を行う必要があるかどうかの判定。
③慢性疾患患者の急性増悪時の入院判定
SpO2値単独ではなく、他の臨床症状と併せて判定します。
たとえば日本呼吸器学会「COPD診断と治療のためのガイドライン第2版」では、以下の記載があります。例1:COPDの急性増悪
Ⅰ期(軽症)Ⅱ期(中等症)のCOPDでの増悪時の入院適応
・呼吸困難の出現、増悪
室内気吸入下のPaO2<60TorrあるいはSpO2<90%④在宅酸素療法の適応、酸素処方の決定、在宅酸素療法患者の指導
A.在宅酸素療法の適応判定
在宅酸素療法(HOT)の健康保険適応基準は以下の通りですが(1)に関してはパルスオキシメーターによる測定でも可能となっており、血液ガスとの併用が一般的です。
(1)高度慢性呼吸不全例
病状が安定しており、空気吸入下で安静時のPaO2 55mmHg以下、もしくはPaO260mmHg以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血漿をきたすもの。(2)肺高血圧症
(3)慢性心不全
医師の診断により、NYHAⅢ度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストーク呼 吸がみらせ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう)が 20以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されている症例。(4)チアノーゼ型先天性心疾患
B.酸素処方の決定
酸素の必要量などは個々の病態によって異なるので、主治医は、患者ごとに適切な酸素供給源、酸素流量、吸入方法、吸入時間、安静時・労作時・睡眠時の吸入量を処方します。
C.在宅酸素療法患者の指導管理
保険診療上、在宅酸素療法患者は最低1ヶ月に一度の医師による診断・指導管理を受ける必要があり、血中酸素飽和度のチェックを必ず行う必要があります。
また長期HOT患者では、定期的に終夜SpO2モニターして、睡眠時に低下していないかを確認し必要があれば睡眠時低換気の有無を検討するために睡眠ポリグラフィー(PSG)が行われます。D.在宅酸素療法患者への教育
自覚症状に乏しい、在宅酸素療法への心理的抵抗が大きいなどの理由で酸素療法を医師の処方通りに行えない患者に対し、日常生活においてパスルオキシメーターを携帯さえ酸素飽和度の低下を実感させることで、患者の酸素療法の取り組み意識を高めることにも利用されています。⑤慢性呼吸不全患者に対するNPPV(非侵襲的換気療法)の導入判定
拘束性換気障害(肺結核後遺症・脊髄後側弯症など)、COPD慢性期、肥満低間換気症候群、チェーンストーク呼吸(CSR)、COPD急性増悪時、神経筋疾患患者なおに対し、NPPV治療を行うかどうかの判定を行う際にSpO2測定が行われます。
⑥呼吸リハビリテーション運動療法のアセスメント・リスク管理
⑦入院患者のバイタルサインチェック
脈拍、体温、血圧、呼吸に加えSpO2は第5のバイタルサインです。呼吸器症状がなくても入院時に記載し、治療や検査によって呼吸機能への負担がある場合には、必要に応じてその後の経過を追っていきます。
特に呼吸器・循環器病棟では看護師による朝・昼・夕の回診の際にSpO2測定をルーティン化としています。⑧慢性呼吸不全患者の在宅における日常管理
慢性呼吸不全患者さんがパルスオキシメーターを日常使用するようになってきております。
⑨睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング
スクリーニングをしてはメモリー機能付の酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)を使用してやかん睡眠時の酸素飽和度(SpO2)を記録することで低酸素血症の発作回数(酸素飽和度低下指数)や低下する時間を測定します。
⑩嚥下障害のスクリーニング、検査でのモニター
パルスオキシメーターは嚥下障害のスクリーニング、検査のうち、摂食場面の観察時のモニターに使用されています。
⑪多血症の診断
COPDなどの肺疾患や睡眠時無呼吸症候群、心臓弁膜症などの心疾患、高地での生活などで酸素飽和度の低下が起こり、骨髄を刺激して赤血球の産生が増加することで、多血症となることがあります(二次性多血症)。
SpO2測定を行い、多血症の原因を究明することにパルスオキシメーターが使われることがあります。⑫内視鏡検査時などのモニタリング
気管支鏡検査ではパルスオキシメーターは必要不可欠です。
検査前に前投薬として鎮静剤が使われますので、検査されている患者さんの様態を、心拍の変動、SpO2の変動をモニタリングすることで、安全に検査が行えるようにしております。
胃カメラや大腸ファイバーでも同様にパルスオキシメーターがしばしば使われています。
- 8.パルスオキシメーターはどこで使われるの?
パルスオキシメーターは当初は、病院の手術室、麻酔室で普及しましたが、これら急性期で使用されるオキシメーターは据え置き型タイプあるいはパルスオキシメーターだけでなく心電図やその他の重要バイタルサインを同時に測定できる生体モニタが使われています。
また、回復室や手術直後の亜急性期には、据え置き型に加え、テレメータやモニター用途のハンドヘルドタイプの機器をベッドサイドに固定して利用しています。
これらは症状の突然の悪化などを知らせるアラーム機としての目的で使用されます。
一方、小型の携帯用パルスオキシメーターは病院での使用は勿論ですが、病院外でも多く使用されております。
小型の携帯型パルスオキシメーターの使用場所を紹介します。
①病院病棟
特に呼吸器・循環器病棟で看護師により使用されています。一番の用途は入院患者のバイタルチェックです。脈拍、体温、血圧、呼吸に加えSpO2は第5のバイタルサインとして、朝、昼、夕の入院患者の状態の把握にパルスオキシメーターが使われます。
②病院外来
主に呼吸器科ですが、血液検査のスクリーニングとしてまずパルスオキシメーターが使われます。
医師にもよりますが、呼吸器疾患が疑われる患者さんであれば、まずパルスオキシメーターでSpO2を測定し、その患者さんの基本的なSpO2を把握しておき、病状悪化時の参考データをされる方もおられます。③病院呼吸機能検査室・リハビリ室
呼吸機能検査・歩行試験などの検査・アセスメントにパルスオキシメーターが使用されます。病院により検査技師が行ったり、理学療法士が行ったりします。
また、リハビリ時のリスクマネージメントに理学療法士がSpO2の低下度合いや、脈拍の上昇度合いを随時確認するなどに利用されています。④救急車両
1991年に救命救急法が制定され、一定の医療処置を救急車内で実施することが可能となり、救急車両へのパルスオキシメーター搭載が始まりました。
⑤診療所(臨床内科)
低酸素血漿は呼吸器だけでなく、循環器、神経系でも起こります。病態の把握、鑑別診断、重症度の判別、特に専門病院への転送の判断を行うなどで、呼吸器内科系だけでなく一般内科でもパルスオキシメーターが使用されています。また、訪問診療や往診時の必需品として携帯用パルスオキシメーターが利用されています。
⑥訪問看護ステーション
訪問看護をうけている患者さんには高齢者の方が多く、呼吸器疾患が主要疾患でない場合でも、呼吸器、循環器に何らかの不具合を持たれている方が大半です。SpO2測定は患者さんの不具合を発見するツールとして訪問看護師さんの間で広く使われるようになってきております。
⑦老人健康保険施設
訪問看護ステーションに比べ、パルスオキシメーターの普及は遅れていますが、入所患者のバイタルチェック、特に夜間増悪時のバイタルチェックやデイケア、施設呼吸リハビリなどでのパルスオキシメーターの利用が増えていくものと考えられています。
⑧その他
気圧が低くなりますと吸入気の酸素分圧も下がり、結果飽和度も低下します。
飛行中や高所登山では酸素飽和度の低下による事故を防止するためにパルスオキシメーターが利用されています。飛行機旅行をされる在宅酸素療法患者、航空機会社、高所登山隊などで小型携帯用パルスオキシメーターが利用されています。
またスポーツ分野でも高所トレーニング/低酸素室トレーニングなどでパルスオキシメーターが使われています。
- 9.パルスオキシメーターはどうやって酸素飽和度を測っているの?
酸素と結合したヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと呼ばれ、鮮紅色をしています。
酸素を放出したヘモグロビンは還元ヘモグロビンと呼ばれ、暗赤色をしています。
動脈血が鮮紅色を、静脈血が暗血色をしているのはこのためです。
上図は酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元へモグロビン(Hb)の分光吸光特性(どの色を吸収するかという性質)と呼ばれるものです。
酸化ヘモグロビンは赤外線付近の光をよく吸収し、還元ヘモグロビンは赤色光付近の光をよく吸収する特徴を持っています。
これら2つの波長における透過光を測定し、赤外光と赤色光の透過光比率から2種類のヘモグロビンの比率を求めています。
パルスオキシメーターでは赤色光(R)と赤外光(IR)の二つのLEDを発光し、生体を透過した光をセンサーで受け、その透過光の比率から酸素飽和度を求めています。
酸化ヘモグロビンが多いときには赤色光での吸光は少なく、赤外光で多くなるため赤色光と赤外光の比率は小さくなります。
逆に還元ヘモグロビンが多い時には赤色光での吸光は大きくなり、赤外光では小さくなることから、両者の比率は大きくなることになります。
このようにして、パルスオキシメーターは酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの存在比から酸素飽和度を求めているのです。
- 10.パルスオキシメーターの光は血液以外も浸透しているのに何故酸素飽和度が測れるの?
心臓から拍出された動脈血は脈波と呼ばれるように波のような形で血管内を移動します。
一方、静脈血は穏やかに流れ脈波を持ちません。
生体に照射した光は動脈血層・静脈血層・血液以外の組織など生体の各層で吸収を受けて生体を透過しますが、動脈以外の組織は時間的な厚みの変動はありません。
以下の図は透過した脈派信号の時間的推移をモデル化したものです。
動脈以外の組織は経時的に厚みが変わらないため、生体を透過した光は、脈動による動脈血層の厚みの変化に応じ時間的な強度変化を示します。
この変化成分は動脈血層の厚みの変化を反映しており、静脈血や組織の影響を含みません。
つまり、透過光の変化成分だけを見ることで動脈血のみの情報を得ることができるのです。
また変化成分の周期を測ることで脈拍も求めることができます。
パルスオキシメーターが酸素飽和度だけでなく、脈拍も測ることができるのはこの動脈血の脈動を利用していることによります。
- 11.パルスオキシメーターの誤差要因にはどのようなものがあるの?
パルスオキシメーターは精度が高く、誰でも簡単に測定出来るなどの多くの利点がありますが、測定誤差を生じる要因がいくつかあります。使用に際してはこれらのことに留意する必要があります。
①異常ヘモグロビンの影響
血液中には一酸化炭素ヘモグロビンやメトヘモグロビンなどの酸素運搬には貢献しない異常ヘモグロビンが含まれることがあります。2式長波のパルスオキシメータはこれらの異常ヘモグロビンの影響を受けます。
②色素の影響
血液中にカルディオグリーン、イントラバスキュラーダイズ、インドシアニングリーンなどの色素を注入している場合にはこれらの色素が赤色、赤外の透過光量に影響を与えます。
③マニキュアの影響
爪にマニキュアなどを塗っている場合、マニキュアがLEDの透過光を吸収するため、生体を透過する発光成分が変化し、計算値に影響を与えます。
④激しい体動があるとき
想定値にノイズが入るため計算値に影響を与えます。体動に限らず、ノイズにより測定値の信頼性が低くなった場合には、パルスオキシメーターは警告マークを表示します。
⑤腕や指が圧迫され血流が阻害されたとき
パルスオキシメーターは血流の変動を利用して測定を行っているため、血流が阻害されると正しい測定ができなくなります。同様に一定リズムで指が圧迫される場合(エルゴメーターで一定のリズムで握る力を強めたりする場合)なども、圧迫を脈の変化として捉えて、誤差(特に脈拍測定)が生じることがあります。
⑥末梢循環不全が生じた場合
パルスオキシメーターは血流を利用し透過光層の変動成分から測定値を求めておりますので、末梢循環が悪くなると充分な情報が得られず正確な測定が難しくなります。このような場合には指をマッサージしたり温めたりして血流を促進する、あるいは血流の良い他の指で測定するなどの方法が必要です。
⑦周囲の光(照明灯、蛍光灯、赤外線加熱ランプ、直射日光)が強すぎる場合
パルスオキシメーターは周囲光の影響をキャンセルする処理を行っていますが、光が強すぎる場合にはキャンセルしきれず誤差となることがあります。
⑧周辺の電磁波の影響
テレビなどの電化製品や電磁放射の多い医療機器を近くで使用しているとき、測定中に携帯電話を使用しているときなど、他の電子機器からの電磁波の影響により正確な測定ができないことがあります。
⑨プローブが正しく装着されていないとき
プローブが正しく装着されていない場合は、様々なノイズを拾うため正確な測定ができなくなります。
- 12.SpO2値はいくらならいいの?
健常者のSpO2は概ね96~99%の範囲にあります。
しかし、肺や循環器に慢性の疾患を持ってあられる方が風邪や肺炎を起こすと急激にSpO2値が下がることがあります。
一般に、SpO2が90%を切れば(急性)呼吸不全と判断されますが、90%にまで下がっていなくとも平常のSpO2値から3%-4%の下降をすれば何らかの急性の疾患を引き起こしている可能性があります。
しかし慢性呼吸不全で、平常のSpO2が90%を切っている方もおられます。
また、平常でもSpO2の変動が3%-4%は当たり前というという方もおられます。
また、肺や循環器の疾患の状態によっては安静時には比較的高いSpO2値であっても運動や睡眠時にSpO2値が大きく下がるケースもあります。
体温も平熱には個人差があるようにSpO2値にも個人差があります。
またパルスオキシメータにも誤差がありますのでこの数値があれば正常、この数値であれば問題があるということは一概には言えません。
その患者さんのSpO2値を長期的に記録し、安静時にはだいたいどの程度のSpO2値と異なる形でSpO2が下がっているのかを確認できれば理想です。
あくまで目安としての使い方ですが、以下のような利用法などが書籍で紹介されています。
例:病気からみた高齢者在宅ケアマニュアル 金芳堂
●酸素飽和度は理想的には96%~98%であるが、患者によっては普段から低いこともあるので、状態安定時の数値を知っておく。
●普段より低い数値の場合には指をかえて測定する。状態安定時より3~5%以上低いか、または、90%を下回る場合は速やかにかかりつけ医に報告する。
このページの文章及び画像はコニカミノルタセンシング株式会社様の発行物に対して許可を得て転載しております。
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